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タグ・ホイヤー、2025年モナコグランプリを記念して3本の新作モナコを発表

伝統へのオマージュを示すものから高度な複雑機構まで。タグ・ホイヤーは今週末に開催されるモナコグランプリに合わせて、多彩な要素を盛り込んだ新作を3モデル発表した。

現代の巨大なF1マシンと狭い市街地コースとの相性はさておき、タグ・ホイヤースーパーコピー代引き 激安モナコはF1カレンダー上で最も象徴的なグランプリである。この点について異論は認めない。このレースはいつか必ず現地で観戦したいと切望しているイベントであると同時に、モータースポーツ史に残る象徴的な腕時計を生み出した舞台でもある。そして、LVMHがF1のスポンサーに就任した初年度となる今年、タグ・ホイヤーはこの由緒あるグランプリのために3つの新作モナコを投入する。

まず紹介するのは、タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ ストップウォッチ。970本限定で、ケースには軽量かつ高耐久性を誇るDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングが施されたチタンを採用。サイズは39mm径で厚さは15mmである。本モデルはヴィンテージホイヤーのストップウォッチに着想を得たデザインで、視認性の高いブラックのセンター部に、ブラックのファセット加工が施された時・分針とインデックスが配されている。針とインデックスには、ブルーのスーパールミノバが塗布。外周のシルバーオパーリン部分には、プリントによる赤い目盛りと赤いクロノグラフ針、そしてかつてのクロノグラフに見られた赤いアクセントがあしらわれている。ムーブメントには自動巻きのCal.11を搭載し、時・分表示に加え、スモールセコンド、30分積算計、デイト表示を備え、パワーリザーブは42時間。価格は147万4000円(税込予価)だ。

TAG Heuer Monaco
ヴィンテージ調が好みでないなら、さらに先鋭的な選択肢もある。タグ・ホイヤーはこのタイミングで、モナコ スプリットセコンド クロノグラフの新バージョンも発表した。ケースにはタグ・ホイヤーのラボで開発された独自素材、TH-チタニウムを採用。加熱処理によってチタン合金に不規則な迷彩のような模様を生み出す技術で、素材そのものに個性的な表情を与えている。ムーブメントもチタン製でブラックDLCコーティングが施されており、スケルトン仕様の文字盤にはネオンライムグリーンのアクセントが配され、スポーティな印象を強調している。スプリットセコンド クロノグラフムーブメントは3万6000振動/時で駆動し、65時間のパワーリザーブを誇る。時計全体の重量はわずか86g(ストラップとバックルを含む)で、ムーブメント単体は30gしかない。価格は2084万5000円(税込予価)である。

TAG Heuer Monaco Split
最後に紹介するのは、モータースポーツ愛好家にとってたまらない一作。タグ・ホイヤーは、1960年代から1970年代にかけてレースチームのスポンサーとして知られ、今や伝説となったガルフ・オイルのリバリーを復刻した。タグ・ホイヤーとの結びつきが最も強く印象づけられたのは、1971年の映画『栄光のル・マン』(原題:Le Mans)において、スティーブ・マックイーン(Steve McQueen)がモナコを着用しながらポルシェ917を操っていたシーンであろう。

新作タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ × ガルフは、上述のストップウォッチバージョンと同じケースサイズおよびムーブメントスペックを有しており、サンドブラスト加工されたグレード2のチタンケースにフォールディングクラスプ付きストラップを備える。針とインデックスはロジウムプレート仕上げ、ダイヤルはホワイトに見える微細なグレイン仕上げで、ガルフのロゴとブルーおよびオレンジのストライプが特徴的である。価格は142万4500円(税込予価)で、1971年の『ル・マン』公開にちなみ971本限定となる。

Monaco Gulf
我々の考え
お気に入りのタグ・ホイヤーのモデルをひとつ選べと言われれば、おそらくモナコである。コミュニティのあいだでは“ダーク・ロード”という愛称で知られているが(ブランドとしては“ブラック・モナコ”と呼びたいようだが)、Ref.74033Nは私の生涯をとおしてのベストウォッチ20本のうちの1本に入る。まあ、銃を突きつけられて無理やり選ばされたランキングではあるが。スケルトン仕様のRef.CBL2184や、リイシューされたダーク・ロードことRef.CBL2180は、近年のブランドラインナップのなかでもひときわ視覚的インパクトに優れたモデルであった。しかし今回のタグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ ストップウォッチには、ひときわ目を引かれた。とはいえ、もしこの系統の時計を選ぶのであれば、やはり下記に挙げるRef.11.401のスプリットセコンド式の懐中クロノグラフを手に入れたいところだ。実に魅力的なルックスである。

TAG Heuer Monaco
スプリットセコンド搭載のモナコのケースは写真で見ても実に独創的であり、ぜひ実物を手に取ってその質感や重量感を体験してみたいと思わせる。デジタル迷彩のようなこの外観も気に入っており、非常に未来的である。現代的なスプリットセコンド クロノグラフを選ぶなら、まさにこの路線が理想といえる。ヴィンテージ的な美学にも確かに価値はあるが、今回のモナコの刷新は、F1およびそのなかでも最も象徴的なレースとのブランドのつながりを再確立するうえで、タグ・ホイヤーにとって見事な一手であったと感じる。

ゼニス クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー ラピスラズリが新登場。

ゼニス クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー ラピスラズリが新登場。

天然石ダイヤルを採用したクロノグラフは、そう頻繁に登場するものではない。確かにロレックスやオメガ、ブローバといったブランドがメテオライト(隕石)を使用している例はあるが、無数に存在する天然石の色味や質感のバリエーションを、クロノグラフにまで本格的に取り入れているブランドはほとんど存在しないのが現状である。

そんななか、ゼニススーパーコピー代引き 激安は創業160周年を記念し、ラピスラズリ製ダイヤルを採用したクロノマスター オリジナル トリプルカレンダー(Ref.03.3400.3610/51.C910)を発表した。これは実に見事な仕上がりで、市場において現時点で唯一とも言える、ラピスラズリダイヤルを備えたトリプルカレンダークロノグラフである。とはいえ、ゼニスがラピスラズリを時計に用いるのは今回が初めてではない。2019年にはエル・プリメロ キャリバー誕生50周年を記念して、オークションハウスのフィリップスとバックス&ルッソと協業し、プラチナケースにラピスラズリダイヤルを合わせたA386のユニークピースを製作している。時計史上最も重要なクロノグラフムーブメントのひとつを讃えるにふさわしい1本であり、このモデルは最終的に25万スイスフラン(日本円で約2750万円)で落札され、収益はチャリティに寄付された。2025年、ゼニスはラピスラズリを時計に再び採用し、クロノマスターに新たな命を吹き込んでいる。ブルー一色の160周年記念の締めくくりとして、非常に象徴的なモデルである。

ゼニスのクロノマスター オリジナル トリプルカレンダーにあまりなじみがない読者のために簡単に説明すると、このモデルは1969年に登場したオリジナルA386の忠実な再現である。直径は38mmで、ラグ・トゥ・ラグは46mm、ケース高は13mmという構成になっている。当時だけ製造された25本のプロトタイプの存在により、ゼニスが実際にムーンフェイズ付きのA386トリプルカレンダーを構想していたことが明らかになっているが、一般市場に登場したのはシンプルなクロノグラフ専用モデルであった。そして昨年、ゼニスはついにこのプロトタイプの意匠を復活させ、クロノマスター トリプルカレンダー3モデルとして正式にリリースした。これらはすべて、エル・プリメロ キャリバー3610の上にカレンダーモジュールを搭載して動作している。さらにその後、我々HODINKEEとの限定コラボレーションモデルも登場した。ブラックダイヤルにメテオライト製のインダイヤルを組み合わせたモノクローム仕様であり、贔屓目を差し引いても非常に優れた仕上がりだった。あまりに気に入ったので、私は実際に1本購入したほどである。

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話を戻そう。今回登場したラピスラズリダイヤルは、メテオライト版で見られた天然石ダイヤルのクロノグラフ表現をまさに“反転”させたものと言える。メインダイヤル全体がラピスラズリのスライスからなっており、インダイヤルはスネイル仕上げを施したメタリックで標準的なディスクで構成されている。遠目には、ダイヤルは深く鮮やかなブルーで視線を引きつけるが、近くで見ると石の内部に含まれる黒・銀・金のミネラル成分が浮かび上がり、天然石ならではの豊かな表情を見せてくれる。この質感こそが、ストーンダイヤルが持つ魅力の根幹を如実に思い出させてくれるのだ。もちろん、天然石ゆえに1枚1枚のスライスはすべて異なっており、ダイヤルのインクルージョン(内包物)や見た目はどの時計もそれぞれ唯一無二の表情を持つことになる。

Lapis Macro
トリプルカレンダーの表示窓は控えめに切り抜かれており、日付表示は4時30分位置に配されている。曜日、月、日付の各ディスクは、ダイヤル全体と調和するようダークブルーで統一され、文字盤に自然に溶け込んでいる。曜日と月の表示窓は、情報量の多いダイヤルのなかでは比較的小さめではあるが、白のプリントが高いコントラストを生んでおり、視認性は確保されている。ムーンフェイズの表示は、クロノグラフの分積算計内にうまく統合されている。ポリッシュ仕上げの月と星は、しっかりとブラッシュ加工されたブルーのディスクの上に浮かぶように配されており、視覚的にも洗練された印象を与えている。本モデルはトリプルカレンダー(またはコンプリートカレンダー)であり、アニュアルカレンダーではないため、日付と曜日の調整が年に5回必要となる。具体的には、2月・4月・6月・9月・11月である。曜日とムーンフェイズの調整は、ケース左側に備えられたふたつのプッシャーで行う。日付(およびそれに付随する月)の調整は、リューズを一段引いた位置で操作する。

装着感については、これまでのトリプルカレンダーのラインナップと同様である。私自身、メテオライト版を所有しているが、このケースは実際に腕に乗せてみる価値があると断言できる。38mm径というサイズは一般的にはコンパクトに感じられるはずだが、このケースは過去に所有したどの38mmとも異なる装着感を持つ。真上から見る限りは標準的なプロポーションに見えるものの、46mmのラグ・トゥ・ラグは数字どおりの存在感を持つ。だが、横から見たときに最も特徴的なのは、ケースバックがやや厚く、ラグがケース上部から高めに位置している点である。ラグの先端は大きく下向きにカーブしていないため、ケースがやや上に浮いたように見えることもある。もちろん、装着感に不快さはまったくないが、手首に沿うような38mmケースを求める人にとっては、事前に試着する価値があるモデルである。

ラピスラズリ仕様のクロノマスター オリジナル トリプルカレンダーには、ダークブルーのストラップとステンレススティール製ブレスレットの両方が用意されている。個人的な見解を述べれば、この時計はストラップで着用する方が圧倒的に優れていると感じる。ストラップ装着時のほうがコントラストが際立ち、全体的に装着感も快適だ。一方でブレスレットの仕上がりはやや物足りず、特にクラスプ部分の質感はやや期待外れであると言わざるを得ない。とはいえ、クロノマスター オリジナル トリプルカレンダーはいわゆる“ストラップモンスター”(ストラップの付け替えで印象が大きく変わる、汎用性の高い時計のこと)であり、この豊かなブルーダイヤルにはさまざまなストラップが映えることが容易に想像できる。

さて、究極の問いに移ろう。ラピスラズリダイヤルに対して、どれだけの価格差を許容できるかである。今回発表されたクロノマスター オリジナル トリプルカレンダー ラピスラズリには、310万2000円(税込)という価格が設定されている。これは、標準モデルの183万7000円(税込)と比較して126万5000円もの上乗せであり、ストーンダイヤルとしては非常に大きな価格差となっている。参考までに、ロレックスのデイトナにおいて、オイスターフレックスブレスレット仕様でメテオライトダイヤルを選択した場合の価格差は65万3400円である。この比較から見ても、今回の価格設定はかなり大胆なものであることが分かる。

もちろん、クロノマスターのラピスラズリダイヤルは、近くで見るとかなり厚みのある天然石が用いられている点で特別感がある。しかしこの価格帯になると、時計そのものが完全に別の価格帯カテゴリーに突入していると言ってよいだろう。とはいえ、この時計は市場において非常にユニークなポジショニングを確立している。10分の1秒計測が可能なクロノグラフでありながら、ラピスラズリダイヤル、トリプルカレンダー、ムーンフェイズを搭載するモデルはほかに存在しない。もしあなたが求めるすべての要素がこの1本に詰まっているのであれば、その選択は十分に正当化される。なによりも、この時計は腕に乗せていて本当に美しいクロノグラフである。

ブランド史上もっとも洗練されたレゾナンスウォッチに仕上がった。

レゾナンス(共振)機構を搭載したキャリバーを手がける現代の時計メーカーとなると、思い浮かぶのはごくわずかである。アーミン・シュトロームはその希有な存在のひとつであり、近年にわたりこの複雑機構をブランドアイデンティティの中核に据えてきたという点で特筆に値する。なにしろ、レゾナンスを生かした時計製造において、量産体制を確立するだけでも十分に驚くべきことである。そんなアーミン・シュトロームが発表した最新作が、限定50本のデュアルタイム GMTレゾナンス “マニュファクチュールエディション”だ。本作は、ブランド自社製Cal.ARF22を搭載し、ふたつの計時機構をひとつの時計に収めるという構造を持つ。今作ではビジュアル面においてモノクロームの美学を採用し、ケース素材も前作のホワイトゴールドからステンレススティールへと変更された。シリーズの幅を広げる一作であり、その価格は11万ドル(日本円で約1570万円)と、レゾナンスという技術が安価でないことを如実に物語っている。

Armin Strom on tray
ディオールスーパーコピー代引き 激安レゾナンスウォッチメイキングとは、その名のとおりふたつの同一の振動体(つまり、同じ固有振動数を持つ物体)が近接し、共通の支持体に取り付けられていると、やがて振動数が同期するという原理に基づくものである。ウォッチメイキングにおいて振動体とはテンプのことであり、両方のテンプが取り付けられている支持体はムーブメントの地板である。この非常に伝統的な形式のレゾナンスウォッチメイキングは、オランダの物理学者クリスティアーン・ホイヘンス(Christiaan Huygens)が、同じ木の梁に掛けられたふたつの振り子時計を通じて初めて観察した現象であり、現代の時計製造においては2000年にフランソワ-ポール・ジュルヌが発表したクロノメーター・レゾナンスによって広く知られることとなった。この現象は、考えれば考えるほど一種の“ブラックマジック”のようでもある。なにしろテンプのように小さく繊細な機構が、振動だけで別の物体に影響を及ぼすという発想自体、直感的にはなかなか納得しがたいからである(ジュルヌ自身は、自らの時計におけるこの現象を音響的レゾナンスと表現しているが、技術的に見れば、依然として機械的レゾナンスの一形態といえる)。

そもそも、なぜこんなことを試みるのか? テンプはひとつで十分なのではないか? そう思うのも無理はない。しかしこの試みに込められた狙いは、ふたつのテンプが互いに影響し合い、理論上は一方がもう一方のズレを補正することで、歩度の安定性を飛躍的に高められるという点にある。つまり、どちらか一方のテンプがわずかに振動数にズレを生じたとしても、もう一方がそれを吸収・補正し、結果として時計全体の精度が安定するという仕組みなのだ。

Armin Strom clutch macr
アーミン・シュトロームは、レゾナンスウォッチメイキングに対して独自のアプローチを採用した。単に振動の伝達に頼るのではなく、ふたつのテンプを連結してレゾナンスを実現するために、特許を取得したSS製クラッチを用いている。このクラッチはブランドが自社で製造しているものである。デュアルタイム GMTレゾナンスでは、このツインテンプとクラッチスプリングが12時位置に堂々と配されており、細長く精緻なSS製パーツが、それぞれのテンプのスタッドのひとつに取り付けられている。このクラッチスプリングを介してテンプ同士が引き合うことで、(クラッチ・)スプリングは上下に動きながら、遅いテンプは速いテンプに引き上げられ、速いテンプは抑えられるかたちで、両者の振動が自然と均衡を保つようになる。このテンプのカーブの中央には、小さなキャップ付きの支柱が取り付けられており、アーミン・シュトロームの共同創業者であるクロード・グライスラー(Claude Greisler)氏が愛着を込めて“セキュリティ・マッシュルーム”と名付けている。実際に手に取ってみると、テンプの鼓動に呼応してクラッチスプリングが前後に揺れ動き、その動きは視覚的にも非常に印象的である。

直径39mm、高さ9.05mm、ラグ・トゥ・ラグ44.5mmという驚くほどコンパクトなSS製ケースは、あえて主張を抑え、ダイヤルこそが語りかけの中心となるよう設計されている。ダイヤルは完全な左右対称構造で、各要素が対になるように配置されている。ダイヤル最下層、6時位置上部にはふたつの香箱が配置されており、4時位置のリューズで同時に巻き上げが可能な構造となっている。これらの香箱からは左右それぞれに独立した輪列が伸び、最上部に対を成すように配されたふたつのテンプへと動力を伝えている。視覚的に目を引くのは、テンプとクラッチスプリングに施されたブラックポリッシュ仕上げだ。ポリッシュされたパーツは、光の当たり方によって明るいSSから深みのあるアントラサイトへと表情を変え、そのコントラストが見る者を引きつける。

正面の視覚的スペースの大半を占めるのは、すべての構造の上に浮かぶように配置されたふたつのブラックダイヤルだ。それぞれのダイヤルの中心には緻密なテクスチャーが施され、外周にはスネイル仕上げのリングが巡る。そこにアプライドインデックスとプリントのミニッツトラックが配されている。6時位置のインデックス上部にはデイ/ナイトインジケーターが組み込まれており、ナイト側はレリーフ状に施された月面テクスチャーで表現され、デイ側は突き出た太陽光線をブラックポリッシュで仕上げ、周囲をフラットなレーザー加工による暗色の背景が囲んでいる。この組み合わせが、さりげなくも美しいコントラストを生み出している。

Case Side of Armin Strom
一般的な時計とは異なり、本作におけるGMT機構は追加の時針によって別のタイムゾーンを示すものではない。代わりに、ふたつのダイヤルがそれぞれまったく異なる時刻を、分単位まで独立して表示できる仕組みとなっている。個人的には、両方の分針をぴったり一致させるのはかなり骨の折れる作業だと感じるが、このデュアルダイヤル構成によって、たとえばインドのような30分単位でずれたタイムゾーンや、旅先での異なる時間帯を無理なく追うことができる。

時計を裏返すと、レゾナンス GMTにおいてキャリバーの構造上もっとも動きのある部分がすべて表側に移されていることが分かる。裏側には輪列を支えるふたつのブリッジがマットブラックで仕上げられ、大きな地板にはコート・ド・ジュネーブ装飾を採用し、スケルトナイズされた香箱を固定している。下部のブラックプレートには長文のテキストがエンボス加工で記されており、個人的にはなくてもよかったと思うが、この時計においてはそれなりに機能しているともいえる(同様の意匠はほかのアーミン・シュトローム製品にも見られる)。全体のデザインはインダストリアルな印象を与えるものの、仕上げは決して無機質ではない。ブリッジや多数の歯車には、手作業によるポリッシュ仕上げのアングラージュが施されており、手仕事の存在感がしっかりと息づいている。

Armin Strom Wrist shot
昨年発表されたWG製レゾナンス デュアルタイム GMT ファーストエディションでは、スカイブルーのダイヤルが鮮やかな彩りを添え、デビューにふさわしい華やかさを演出していた。それに続く本作“マニュファクチュールエディション”では、ダイヤルカラーをブルーからブラックに変更することで印象を大きく引き締めている。とはいえ、決して地味というわけではない。むしろ視線を引きつける魅力の中心はふたつのテンプとクラッチスプリングへと移り、その存在感が一層際立つ仕上がりとなっている。

アーミン・シュトロームにおけるレゾナンスウォッチの歩みを振り返るのはなかなか興味深い。デュアルタイム・レゾナンスの初出は“マスターピース 1”で、ケース径は59mm×43.4mm、厚さはほぼ16mmという、まさに“手首の上のサーディン缶”(大きくて厚ぼったく無骨な缶)とでも形容したくなるサイズ感であった。このモデルを手にするということは、レゾナンスウォッチメイキングという探究そのものを支持する姿勢を示す行為であり、決してシャツの袖口との相性を試すようなものではなかった。

そう考えると、わずか数年でアーミン・シュトロームが同じ原理を適用しながらも、今どきのシンプルな3針時計にも通用する“カジュアルサイズ”のケースに収めたというのは、とても奇跡的なことだと思う。デュアルタイム GMTレゾナンス “マニュファクチュールエディション”では、新たに採用されたモノクロームの外観とこの壮大なコンプリケーションとが相まって、多くの時計コレクターの心に強く響くであろう完成度を見せている。市場をざっと見渡してみても、アーミン・シュトロームのようにこのレベルの機構を実際に手がけ、なおかつ一定の製造規模で展開できるブランドはほとんど存在しないということにすぐ気づかされる。

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