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”夢のまた夢”

先日、ある歌を聞いて思い出しました。
もう、23年も前のことですが。。。。。

何度も書いていますが、飲食業をやる前は建築業に従事しており、
あたくしほとんど北海道じゃなく、青森、関東方面が主な現場でした。

冬はまだ暗い内に宿舎を出て、日が落ちるまで”青函トンネル”にいたので、
休み以外はほとんど夜中状態でした。その分、夏は日が長く海も
すぐ前にあり、帰ってきたら皆で”ウニ”を獲ったりしてました。

でも、みんな10代、20代の若者なのでやはり週末には車で約1時間半
掛けて青森市へ行き、夜通し遊び車の中で蚊に刺されながら寝ていました。(笑)

青森は来月(8月)になると『ねぶた祭り』シーズンになります。
そんな時です、たった三週間でしたが夢のような時間を過ごしたんです・・・・・。

彼女は上司の行きつけの”スナック”で働いておりました。
本当は青森じゃなく秋田出身だと言うこと、夜の仕事はまだ一ヶ月位だということ、
釧路に親戚がいるということ、同じ年と言うこともあり何だか盛り上がって、
来週から始まる『ねぶた祭り』を一緒に見に行く約束をしました。

楽しかった。本当に幸せでした。仕事があるので週末しか逢えなかったけど、
それでも、土曜日に仕事を終えて一目散に青森市まで1時間半車を走らせて、
同僚に無理言って日曜日はギリギリまで付き合ってもらいました。

逢える機会や時間が限られてる分、もの凄く大切にするんですよね。
しかも今みたいに携帯なんてなかったので頻繁に連絡は出来なく、
連絡手段は彼女からあたくしのいる宿舎に電話が掛かって来るのみ。
他の人にバレれないように、いつもあたくしと唯一事情を知ってるもう一人の同僚とで
タッグを組んで出るようにしてました。金曜日の18:45分に。

お盆で一旦、札幌へ帰ることになり青函フェリーに乗る待合室でブラブラしていると、
なんと!見送りに来てくれました。一応日時は言ってましたが、予想外だったので
ビックリするやら嬉しいやらで。(でも、正直言うと期待はしてましたけど)

次に来るのは8月下旬で11月まで居れます。普通に考えて8回は逢えます。
なので、青森に来る時は異常なまでに一人”テンション”あがりまくりで、先輩から
「どうした?なんでそんなにはしゃいでんのよ?」なんて不思議がられました。

あの時ほど青函連絡船から見える”フリッパー(イルカ)”が可愛らしく、且つ
いとおしく思えたことはありませんでした。

いよいよ週末です、満を持してお店に行きました。少し奮発して、ファッションに
うるさい先輩に付き合ってもらい、当時若者の間で流行っていた「ニコル」のシャツ
なんて買ったりと。(C・Wニコルさんじゃないですよ)

「0美ちゃん、お盆で辞めちゃったのよ~」と、大原麗子さん似のママが言いました。
「お・ぼ・ん・で?????」「えっ!どうしてですか!」と言うつもりが、
「あっ、そうですか。」と言いながら苦笑いするのが精一杯でした。

それで、もう一人いるスタッフの方が「かとうさん、これ0美ちゃんから預かったお手紙、
後から一人になったら見てあげて。本当にゴメンなさいって。」と、小声で渡してくれました。

中味は見なくても分ってました、どんなことが書いてあるかくらいは。
それよりも「ゴメンさい」を言わなくちゃならないのはあたくしの方でした。

一度、青森へ向かう車の中で先輩達が、
「なぁ、あの0美って言う女結婚してるんだってよ。」って話しているのを、
うつらうつらしながら聞いてしまったからです。

あたくし驚きもしませんでしたし別にショックでもありませんでした。
「な~んにも聞いてないし、な~んにも知らないし」と勝手に自分を
思い込ませてましたから。

デート中、何度か彼女は何かを言おうとして、
一度下を向いて意を決したように見上げますが、
その度にあたくしは必死で違う話をしたんですから。

彼女を迷わせて悩ませていたのは、あたくしの方でした。
後先かまわず、単に自分が逢いたい衝動だけだったんです。
きっと辛かったと思います。

結局、彼女が選択したことは「逢わない=お店を辞める」ことでした。

後で小汚い車へ先に帰り、車の中の電気をつけて手紙を読みました。
本当に楽しかったこと、こんな形でのお別れのこと、
自分でもどうして良いか分らないこと、結婚してることを隠してたこと、
なので最後に逢いたくて見送りに来たこと。

そして、最後にこんなことが書いてありました。
「別れの手紙なのに、書いていく内に”ラブレター”のようになってしまいます。
本当にどうしょうもないですね。ありがとう。」と。

本当に哀しかった、切なかった、”ラブレターのようになってしまいます”
と言う言葉を何度も読み返して泣いた。

しばらく心のどこかにしまっておいたはずですが、先日この歌の歌詞を
見てしまって、23年前のことを思い出したしだいです。


「君との思い出を書いて
君への感謝の気持ちを書いて
一息ついてから最後に僕の本当の気持ちを書いた
遺書を書いていたつもりが
”ラブレター”みたいになってしまって
丁寧に折りたたんで君に渡した」

それが最後の青森でした。。。。。