オーデマ ピゲがプッシャーとスタイラスを廃し、新たなパーペチュアルカレンダームーブメントを発表した。
オーデマ ピゲはもっとも歴史的なムーブメントのひとつに別れを告げた。1978年に発表されたCal.2120/2800は世界最薄のパーペチュアルカレンダーで、このムーブメントはすべてのオーデマ ピゲ QPのベースとなり、46年間にわたり改良が重ねられた。そしてジョン・メイヤーのロイヤル オーク限定モデルに搭載されたCal.5134として(最後から2番目の)登場を果たした。しかしパーペチュアルカレンダーはオーデマ ピゲをもっとも象徴する複雑機構であり、新たなムーブメントが登場することに疑いの余地はなかった。そしてついに、その時が来たのだ。
AP Royal Oak Perpetual Calendars
オーデマ ピゲ時計コピー Nランク本日発表されたロイヤル オークとCODE 11.59には、新しいパーペチュアルカレンダームーブメント、Cal.7138が搭載されており、オーデマ ピゲにおける大きな飛躍となった。新型ムーブメントのCal.7138にはブランドにとっていくつかの新たな成果があるが、もっとも大きな変化は、ムーブメント全体が完全にリューズ操作で調整可能になったことだ。もう謎めいたプッシャーも、無くしがちなスタイラス(先の尖った棒状の器具)も必要ない。
In-Depth: オーデマ ピゲ 初期のロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー
ロイヤル オークが誕生するはるか以前から始まり、AP、JLC、ヴァシュロンが共同開発したCal.2120の開発、そして1978年以降のクォンティエム・パーペチュアルとしての最終形態に至るまでAPのもっとも象徴的な複雑機構の歴史をジェームズ・ステイシーが掘り下げた記事。
先日ベンが書いたように、ほとんどのパーペチュアルカレンダーの最大の難点のひとつは(IWCやモーザーといった一部のブランドを除けば)、カレンダー機能を調整するのに通常、ミドルケースにあるひとつまたは複数の小さな修正“ボタン”を操作する必要があることだ。そう、これは一般論だ。しかし実際のところ煩わしいものだった。
小さなスタイラス、ピンプッシャー、ペンを探し出し、数分間座ってカチカチと調整し、ケースに傷をつけることなくすべてを正しく整えられるよう願う(とりわけ厄介なのがムーンフェイズで、満ち欠けのどちらに寄っているのか判断が難しい)。しかもその間ずっと、それぞれの小さなボタンがどの機能を担当しているのかを忘れずにいなければならない。
ベンの記事へのコメントで誰かが言っていたように、正しいボタンを正しい順番で押すことは、“スマートな機械式”腕時計に本来の機能を果たさせるために、コナミの隠しコマンド(上、上、下、下、左、右、左、右、B、A、スタート。念のため記載)を覚えようとするようなものだった。IWCのリューズ調整機能では、日付(さらに悪いケースでは“年”)を過ぎると後戻りできなかった。そのため時計を使わずに放置するか、IWCに送って調整してもらうしかなかった。APはこの問題を解決し、それ以上の改良も加えた。
AP Perpetual Calendar Sand Gold
APはCal.7138をふたつのメインコレクションで発表した。(当然ながら)ロイヤル オークには、41mm×9.4mmのスティールケースにブルーダイヤルを備えたモデルと、サンドゴールドケースに同系色のダイヤルを合わせたモデルの2種類がある。そしてCODE 11.59には、41mm×10.6mmのホワイトゴールドケースモデルが加わった。
私は今年の初めに、これらの時計を2日間にわたって着用し、触れ、じっくり共に過ごす機会を得た。では、最大の変更点から見ていこう。
AP Royal Oak Perpetual Calendars
ムーブメント面では、Cal.2120/2800ベースの前世代、Cal.5134と比較すると、変更点は明らかだ。新しいCal.7138は2022年にロイヤル オーク “ジャンボ” Ref.16202のアップデートに導入されたCal.7121をベースにしている。最大の特徴は、テンプとゼンマイ香箱を覆う22Kピンクゴールド製の2本のブリッジで、ロジウム仕上げのムーブメント部品と鮮やかなコントラストを成している。
パーペチュアルカレンダーのレイヤーはダイヤル側の下に隠されている。APは、そう遠くない将来にこのムーブメントのスケルトンバージョン(または“SQ”=スケルレット)を発表し、その技術的成果を披露するのではないかと推測せざるを得ない。
AP Royal Oak Perpetual Calendar Caliber 7138
John Mayer Royal Oak
オリジナルのCal.2120/2800をベースにしたムーブメント、Cal.5134を搭載したオーデマ ピゲ ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー ジョン・メイヤー限定モデル。
Audemars Piguet 16202XT
Cal.7121を搭載したオーデマ ピゲ ロイヤル オーク Ref.16202XT。テンプの2本のブリッジとゼンマイ香箱を含む駆動輪列の全体的な類似性に注目。
AP Perpetual Calendar Caliber 7138
少し技術的な話をしよう。29.6mm×厚さ4.1mmの新型ムーブメントCal.7138は、先代のCal.5134より幅は0.6mm広いが、厚さは0.4mm薄く、それでいて振動数は2万8800振動/時(Cal.5134は1万9800振動/時)、パワーリザーブは15時間増の約55時間となっている。
Hands-On: オーデマ ピゲ ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー “ジョン・メイヤー” 限定モデルについて
2024年、自身のHands-On記事によると、ヒット曲“Ravioli Shoes(ラビオリの靴)”の作曲者によって世に送り出された、APのCal.2120/2800ベースの最後から2番目のムーブメントは、公式なお別れモデルだった。
いくつかの改良は、APのロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー ウルトラシン RD#2のCal.5133から受け継がれている。このモデルもまた、すべてのパーペチュアルカレンダー機能がムーブメントの単一レイヤーに集約されており、月末送りカムが日付表示ホイールと一体化され、月カムが月表示ホイールと組み合わされている。リューズ調整機構は第2レイヤーに配置されており、これにより全体が薄型化されている。
1978年に登場したオリジナルのCal.2120/2800は、新型ムーブメントよりも0.15mm薄かった(ただし、直径は1.6mm小さい)。現行の“ジャンボ”に搭載されているCal.7121の厚さは3.2mmだ。RD#3用のトゥールビヨンムーブメントであるCal.2968は、直径こそ同じだが厚さは3.4mmで、37mmケースに収められている。数字を並べ立ててしまったが、私はここ数週間、ある理由でこれらの寸法について考え続けていた。のちほどまた触れるので、覚えておいて欲しい。
The AP QP 7138
ダイヤル下から見たオーデマ ピゲ パーペチュアルカレンダー Ref.7138。Photo courtesy Audemars Piguet
APはパーペチュアルカレンダーのダイヤルレイアウトにも手を加えている。ムーンフェイズは6時位置のままだが、日付表示は12時位置の中央に配置されるようになった(このリリースまで、私はこの事実に気づかなかった)。9時位置に曜日、12時位置に日付、3時位置に月という、同ブランドが“ヨーロピアン”と呼ぶ日付表示にアレンジされている。
AP Royal Oak Perpetual Calendar Sand Gold
年の第1週は見返しリングの12時位置に、月初日と“月曜日”は同様にインダイヤルの12時位置に配置された。まず誰も気づかないような細かい調整は、数字の印字の幅を考慮してそれぞれ幅が異なる31個の特注歯が付いたデイトホイールのおかげで、日付表示は常に各数字の中央を針が指すようになっている。
また午後9時から午前3時のあいだには、赤く印刷された“修正禁止時間帯”のある24時間表示もある。しかしムーブメントの技術的改良により、この時間帯に日付を合わせようとしても、日付も変わらないが、日・月・うるう年のバランスが崩れることもない。この仕組み自体大きなメリットである。
AP Royal Oak QP
AP Royal Oak Perpetual Calendar
オーデマ ピゲは、美しいアベンチュリンの夜空とNASA級のリアルな月の描写を備えた、これまででもっともお気に入りのムーンフェイズをつくりあげた。
昨年も同じジョークを使ったが、新しいサンドゴールド製ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーを“ロロ・ピアーナ”モデルと呼びたい。クワイエットラグジュアリーは終わったと言われようと気にしない。ベージュにベージュを重ねた部屋にいると心が落ち着くのだから、手首にベージュを取り入れない理由はない。これはAPにとってサンドゴールドを採用した3本目の時計であり、昨年の記事で取り上げたこの素材は、自動巻きのフライング トゥールビヨン オープンワーク、リマスター02に続くものだ。
スケルトン加工されたトゥールビヨンではなく、マッチしたサンドゴールドのグランドタペストリーダイヤル、スネイル仕上げのインダイヤル、そしてムーンフェイズによるわずかな色彩を添えた、より落ち着いた仕上がりで、この素材がもっともしっくりくるのはこの組み合わせではないだろうか。