カルティエ 「サントス デュモン リワインド」
カルティエのリリースで最も目立っていたのはおそらく「トーチュ」コレクションでしょう。もちろんそれらも素晴らしいものでしたが、個人的に一番惹かれたのは「サントス デュモン リワインド」でした。歯車を追加して、ただ時間表示がリワインドしている(巻き戻される)だけではないのかと思うかもしれませんが、実はそこに大きな意図が隠されているのではないかと思ってしまうのです。そう思うようになったのは、僕の友人でニューヨークで時計店Carat&Co.を経営するデレック氏(@theminutemon)と会話をしたことがきっかけ。
リワインドの背景を考えるためのキーは3つあります。シャネル 時計スーパーコピー代引き優良サイトまず最初の出発点は「時計の運進がなぜ右回りなのか」ということ。これは諸説ありますが、地球にあった多くの文明が北半球にあったからというのが大きな理由とされています。北半球で日時計を見ると影は右回りに動いていますよね。そのため時計回り=右回りなのです。では逆回転になるのはどこでしょうか...。
これを理解する上で最初に考えるべきは「時計の運進がなぜ右回りなのか」ということ。これは諸説ありますが、地球にあった多くの文明が北半球にあったからというのが大きな理由とされています。人類最古の時計は日時計で、紀元前5000年ごろのエジプトが発祥とされています。エジプトのある北半球で日時計を見ると影は右回りに動いていますよね。時計回り=右回りはここら来ているのだろうということ。では逆回転になるのは地球上でどこでしょうか?
簡単すぎましたね。そう答えは南半球です。北半球で定められた右回りのルールに南半球が倣ったことで、時計回りは右回りという今の世の中の常識が定められているのです。ひとつめのキーは南半球。
では、次のキーはというと「サントス デュモン」ウォッチの出自にあるのではないでしょうか。「サントス デュモン」をカルティエに発注したのは、ご存じのとおりアルベルト・サントス=デュモンです。彼はブラジル出身の飛行家で、操縦桿を握りながらでも計時ができるようにと要望してできたもの。ブラジルは南半球に位置します。つまり日時計が左回りになる国。
そして3つめのキーは本モデルのカーネリアンラッカーのダイヤルです。素材であるカーネリアンの原産国はインド、ウルグアイなどもありますが、ブラジルもそのひとつ。カーネリアンのダイヤルはカルティエのブランドカラーでもある深い赤いカラーです。世界初の腕時計がカルティエであったという誇りをアピールしているかのように感じます。
ケースバックの「サントス デュモン」のロゴも鏡文字に(Photo by Mark Kauzlarich)
この推測はプレスリリースで語られているものではないですが、南半球に位置するブラジル、そのブラジル出身のアルベルト・サントス=デュモン、そしてダイヤルの素材という3要素がこの不可思議なリワインドウォッチの背景にあるのではないかと僕もどうしても勘繰ってしまうのです。
グランドセイコー SLGW003 ブリリアントハードチタン
実際に会場に行ったという人も、日本からSNSや記事で新作情報を追いかけていたという人も、今年のWatches & Wondersは楽しめただろうか。僕は残念ながら会期中日本にいたのだが、日々津波のように押し寄せるリリースに目を通しながら遠いジュネーブの地に想いを馳せて過ごしていた。わずか2mm厚のフライングトゥールビヨン、世界最薄のCOSCウォッチに胸を躍らせ、3900mまで潜水できる金無垢のダイバーズに虚をつかれながら、このなかで実際に手に取って見られるとしたらどれがいいだろうと、1週間悶々としていたのだ。
もちろん、和田が紹介しているカルティエのリワインドや美しいブレスを装着したゴールデン・エリプスのように、その発想のユニークさや超絶技巧の粋に触れたいという好奇心から見てみたい時計はいくつもあった。だが、純粋な時計としての美しさという点で、グランドセイコーから発表された手巻きのドレスウォッチ、SLGW003は僕の心を強く打った。
デザインのベースとなっているのは、1960年代から続くセイコースタイルの発展形として2020年に発表された“エボリューション9スタイル”。筋目と鏡面を組み合わせることで立体的な陰影を生み出したケースラインの内側では、ダイヤカットを施したインデックスと多面カットの針が燦然と輝いている。実はこのケースはグランドセイコー独自のチタン合金であるブリリアントハードチタンでできている。かつては初代グランドセイコーデザイン復刻モデルにも使われたこの素材はレギュラーモデルではこのSLGW003のみに採用されており、チタンならではの軽さに加え、SSの約2倍の硬度を持つ。ドレスウォッチにチタンと聞くと少々珍しく感じるが、ザラツ研磨による煌びやかな光沢はマーク曰くまるでホワイトゴールドかプラチナのようであるという。手巻きのドレスウォッチにもマッチするエレガンスを担保しつつも時計としての実用性も忘れな、“最高の普通”を標榜するグランドセイコーらしい選択に思える。有機的な質感の白樺ダイヤルとのコントラストも面白い。
もうひとつの推しポイントとして、約50年ぶりとなる新作の手巻きムーブメントCal.9SA4が挙げられる。ツインバレルによる80時間のパワーリザーブにデュアルインパルス機構を備える自動巻きのCal.9SA5をベースとしているが、ただローターをとっぱらったというだけではない。ブリッジを含めた全体の4割を今作のために再構築し、100万円越えの時計にふさわしい美観を獲得した。手巻きムーブメントへのアレンジはケースの薄型化にも貢献していて、10mmを切る9.95mmとなっている。ただでさえ低重心で、つけやすさに定評のあるエボリューション9スタイルだ。薄さはドレスウォッチに欠かせない要素だが、素材の軽さと相まって着用感にも優れたパッケージになっているのだろうと思う。
とにかく合理的だ。既存のエレガンスコレクションが見せるひたすらにクラシックな魅力も捨て切れないが、個人的には革新性とのバランスもとったSLGW003はよりグランドセイコーらしい時計であるように見える。200万円以下の自社製手巻きドレスウォッチという記事もあったが、今同じ企画を実施したら採用される可能性は高いだろう。見た目やコンセプト的に派手なモデルだけが注目されるわけではない、というメッセージも込めて、僕はこのドレスウォッチを推したい。